月別: 2017年8月

がんの実例

過剰治療による死(1)

河田次郎さんは六十歳の男性。大手の製造業の営業部長として現役の最前線で猛烈に働いていた。

一九八九年二月、尿に血が混じったことがきっかけで受診した近くの病院で、膀枇がんと診断された。

経尿道的切除術という内視鏡手術を受けた。病理診断の結果、浸潤性の膀眺がんであったことから、抗がん剤療法をコース受けて勤務に復した。

一九九0年二月、再び血尿が出現し、今度は前には経験しなかった排尿する際の痛みや頻尿といった膀脱の刺激症状がそれに加わってきたため、心配になった河田さんは国立がんセンター中央病院の泌尿器科を受診した。

膀眺鏡検査によって、前同膀眺がんが認められたという同じ場所に、 一日で浸潤性のがんとわかる大きな再発巣が認められた。

河田さんは一膀眈全摘除術が必要です一、という担当のH医師の説明はすぐ理解し同意したが、膀脱を取った後の尿路の再建法については熟慮した。

国の治療がやや遅かった感はあるものの、自分の膀脱がんを根本的に治す可能性としては唯一の機会であること」、一治療後はなるべく早く復職して自分が手がけている仕事の責任を全うしたいこと」、「そのためには手術後の日常生活の障害が最小限に留まってほしいこと」一言を考えぬき、H医師から提案された二つの尿路再建法を比較検討した。

ここで、尿路再建法の内容を少し詳しく説明する。

十分な説明のもとに患者さん自身が治療法を選択する「インフォームド・コンセント」の具体的な場面を考える上で参考となると思われるからである。

回腸導管法は小腸の終わりに近い部分の回腸を約十五センチ切り離し、残った回腸と同腸を吻合し食物の通り道を確保する。切り離した回腸の口側の端を縫って塞ぎ約二十センチの長さの筒を作り(回腸導管)、これに両側の尿管を移植する。

すると、腎臓から尿管を通じて流れてくる尿がこの筒の中に流入するようになる。
回場の筒の肛門側の端を、右下腹部にあけた孔を通して腹壁の外に引き出し、皮膚に縫合することにより、筒の中にたまった尿が右下腹部のストーマとよばれる国の部分から流れ出るようになる。

この尿をバウチとよばれる採尿袋に集めて生活する。この手術法は一九五〇年代に米国で開発され、すでに四十年以上、全世界でもっともよく使われている安定した手術法である。

パウチを貼っても衣服を着れば外見は何も変わることはなく、仕事もスポーツも入浴もできる。

しかし一日に五―六回、パウチ内にたまった尿をバウチの底の栓をはずしてトイレで捨てなければならない。

また、平均して一週間に一度はパウチを貼りかえなければならない。ときにはバウチを貼っている部分の皮膚炎などが起こり、生涯にわたってその管理に注意を払わなければならない。

自己導尿型の膀洸は回暢を約七十センチ切り離して、この部分を使って袋を形成して新しい膀脱に作りかえる。

つまり、患者さん自身の小腸の一部を使って袋を作り、ここに尿をためるわけだ。

たまった尿を外に導くために回腸の一部に細Tをして、中にたまった尿が外へは流れ出ない、 つまり漏れないように特殊な縫合をする。

しかし、回腸を皮膚表面のストーマとよばれる国に縫いつけ、この口を通じて身体の外からチューブを通し、新しい膀脱まで到達させると、尿を体外に導くことができる。

回腸導管法に比べるとはるかに複雑な手術となるが、この方法で尿路を再建した場合は、回腸導管法の場合と同じように右下腹部にストーマが作られるものの、尿は漏れてこないのでバウチを貼る必要がない。

小さいガーゼ片をストーマに当てておいて、 一日に五―六回、患者さんが自分で柔らかいチューブを新しい膀眈まで挿入して尿を捨てる。

つまり自己導尿が必要なのだが、パウチから解放される点は大きく、スポーツの愛好家などには好まれる手術である。しかし、 一日に五―六回自己導尿をしなければならない、という煩雑さはつきまとう。

時にはチュープの挿入に困難が生じたり、尿が絶対に漏れない、という保証も難しい、といった問題点がある。

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